北海道から広がるヤマカワプログラム
ヤマカワプログラムは北海道の十勝から始まった農法です。
近年のゲリラ豪雨や干ばつなど、悪天候による病気などで、収量が落ちて困っていた農家の方々をはじめ、日本全国で約300戸の農家の方々が取り組んでいます。
近代農業では、植物に病気が発生したら、農薬による防除を行い、畑の水はけが悪くなれば、プラウ(写真)やサブソイラーといった機械で硬くなった土を粉砕し、軟らかくすることが一般的です。
しかしこの方法では、年々畑の状態が悪くなっていくことを実感しながらも、多くの方は改善する方法がわからなかったというのが実態でした。ヤマカワプログラムは畑の状態を根本から改善し、多くの農家の方々の間で噂となり、人から人へと広がっていきました。
ヤマカワプログラムの基本的な考え方
ヤマカワプログラムは土の中の微生物を大切にし、自然の調和を取り戻すことで植物自身が本来の力を発揮するように整えます。
ヤマカワプログラムの考案者である山川良一さんは、もともと担子菌(きのこ)の研究者でした。山の中では、農薬も肥料もなく、土を起こすこともない中で、自然界は調和を保ち、ふかふかの土にたくさんの微生物(小動物、菌類)が存在していることを観察し、研究していました。
山川さんにとって全く別の分野であった農業の土の状態を見た時に、土の中の微生物にとって、非常に酷な環境であると感じました。微生物たちは自らの住処を確保するためにせっせと家を作ります(団粒構造)。ところが、せっかく作った家も、次の作物の植え付けをされる際には、機械によって一切を破壊され、かき混ぜられてしまうのです。人間界に例えれば、私たちが家を苦労しながら建てて、街を発展させたものの、ある時巨大な力によってすべてを破壊されてしまうようなものです。
肥沃な土の中には数えあげることができないほどの多種多様な微生物が住んでいます。1gの土には、数十億個の菌類が住んでいます。たとえば片手に盛り上げた土の中には、この地球上の全人口よりはるかに多い生物が生きています。
「みみずがたくさんいる土はいい土だ」と昔から言われていますが、みみずは土を食べると共に、土の中に住む様々な菌を食べて生きています。エサとなる菌がなくなってしまえば、生きていくことができません。
また、農薬や化学肥料に依存して、ある菌のみが減ってしまうと、その菌が食べていた微生物が異常に繁殖したり、また一方で、その菌をエサとしていた別の微生物が絶滅したり、自然界の調和が崩れてしまいます。すると作付した植物に病気が蔓延したり、害虫が増えたりします。目に見えない微生物であっても、自然環境の破壊のつけが、知らず知らずに人間に及んできてしまっているのです。
自然は見事に調和がとれている。それを人間が手をかけすぎてしまうことで、調和が崩れてしまっている。
私達人間は自然の部分である。自然の部分を担うことで全体が活きてくる、このことに気づく農家を増やしていくことが、自然環境の蘇生につながっていくと信じて活動しています。
ヤマカワプログラムでは農薬や化学肥料を禁止しているわけではありません。それは人間が研究をして得たものだから、適所に使っていけばいいという考え方です。そうでないと広大な北海道の農地で数人の経営では成り立たないからです。しかし、ヤマカワプログラムを実践しているうちに、作物は健康になり、根から養分を吸収しやすくなるため、自然と使用量を減らしても問題がなくなっていっています。それが自然なのです。